皆さんは「ゴットファーザー・オブ・ソウル」ジェームス・ブラウンの自伝「俺がJBだ!」を読んだことがあるでしょうか?未読の方は読まれた方がいいです。どこを切っても、「謙譲の美徳」などとは一切無縁の、自信満々の男の生きざまが描かれています。「極貧・無学歴・ムショ帰りのどん底から音楽界の頂点に上り詰めた俺」、「芸能界で一番働き者の俺」、「音楽の革命を起こした俺」、「とにかくすごい俺」…「俺イズム」の横溢が凄いです。まあ半端者がそう言っていたら失笑ものなのですが、実際そうなのだから仕方がない。とかく「空気読み」、「忖度」などに明け暮れて気を病んでいる日本人にこそ必要なメンタリティかと思います。皆さんJBを見習いましょう。
そして写真は私の愛聴盤、"Say it live and loud Live in Dallas 08.26.68"です。JB流ファンクミュージックを確立した頃、1968年のライブアルバムです。とにかくJBもバックバンドも絶好調で熱く飛ばします。
その昔、私が司法修習生のころ、暇な男どもと連れ立ってクルマで温泉に行ったのですが、その中の1名が風邪気味で調子が悪いとのことで、車内でぐったりしていました。そこで私が車内でこれをかけたところ、「なんかJB聴いたら元気になってきた!」とのことでむっくりと起き上がり、その後の旅程を元気に過ごしたということがありました。風邪薬にもなる音楽、尊く、ありがたいことです。
特に後半、"Licking Stick","Cold Sweat","There Was A Time"と畳みかける怒涛のファンク百連発が凄い。全ての楽器が一塊となってうねるようなグルーブを生み出し、その上でJBが叫び歌います。「ウッ!」とか「ハッ!」という掛け声、「メイシオ、サックスを吹いてくれ!」というような楽団への指示すら音楽の一部となっています。こんな音楽はほかにないでしょう。
しかし、このライブ時点の時代背景としては、マーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺された直後で、泥沼化したベトナム戦争もあって、アメリカは混とんとした社会情勢となっていました。人種差別のまだまだ厳しい時代、特にこのライブが行われた南部のダラスなども相当の差別があったのではないかと推測します。このライブ盤の中でも、JBは"Say it Loud,I'm Black and I'm Proud"(「大声で言え、「俺は黒人で、それを誇りに思う」と!)という曲を歌ったり、「みんな助け合え、団結しろ!」とか「我らはソウルマン、彼(おそらくキング牧師)もソウルマン」と訴えたり、黒人の一致団結を呼びかけるような姿勢を見せています。厳しい状況に置かれた黒人たちを勇気づけ、自信を持たせるという使命を感じていたのではないでしょうか。
そんな時代背景なども加味して聴くと、より味わい深い名盤です。
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