戦国の三英傑(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)のうちだれが上司として適切か、上司が三人のうち誰だったらよいか、というような話はよくビジネス雑誌などで取り上げられています。歴史マニアの好きな話題です。音楽ファンだったら誰でしょうか、やはりビートルズでしょう。ビートルズのメンバーが上司だったらということで考えてみたいと思います。
まずポール。ポールは上司としては、私は不適切だと思います。いや、ディスっているわけではありません。音楽の才能とは切り離したお話しです。何故か。天才、万能、他人に仕事を任せることができない、というあたりが気になります。ポールの音楽的才能は疑うべくもありません。またビートルズではベースギター担当ですが、ギター(エレキ&アコギ)、キーボード、ドラムもこなすマルチプレイヤーでもあります。
「ホワイト・アルバム」の中に「ディア・プルーデンス」という曲があります。この曲中でドラムが16ビートでハイハットを刻んでいる箇所があります。リンゴはほとんど16ビートを刻まないので、昔の解説本には「リンゴもやれば16ビートができる!やっぱりリンゴは偉い!」みたいなことが書いてあります。しかし、後にこれはポールが叩いている、しかもポールがリンゴに細かく叩き方のダメ出しをした結果、リンゴがキレてスタジオを飛び出したので、仕方なくポールが叩いたことが判明しました。本職よりうまく派手にこなしてしまう、なんて嫌味な人でしょうか。
ポールはジョージにも同じ過ちを犯しており、「ゲット・バック」ではジョージにダメ出ししてキレさせて、こちらは仕方なくジョンがギターソロを弾いています。ジョンのギターソロもいい味なので、これはこれでよかったのかもしれませんが。その他、「タックスマン」ではリードギタリストのジョージの曲なのにポールがド派手なギターソロを弾いて注目される、同じくジョージの「サムシング」でもポールがメロディアスに歌うベースを弾いてギターより目立つ、という数々の「悪行」を行っています。とにかく何でもできてしまうので、他人に仕事を任せられない、という性格が見て取れます。大工でいえば、若いもんのカンナのかけ方が気に入らないと言って、棟梁が自分一人で家を建ててしまうようなものでしょうか。ソロになっても、ポールの作品においてギターソロなどは、ほぼポールが細かく指示を出しているとか。ギタリストにとっては過酷な職場でしょう。ある程度若い者に仕事を任せないと成長しませんし、職場の雰囲気も悪くなるような気がしますが、どうでしょうか。
次にジョンではどうか。ジョンはカリスマ経営者になれそうですが、やや自分勝手なところが気になります。また「ホワイト・アルバム」の話ですが、ジョージが「ジョンはこのアルバムでは僕の曲には一切参加していない」と愚痴っているインタビューを見たことがあります。ポールの作品には参加しているのに、です。そういえばこのアルバムの「オブラディう・オブラダ」はジョンがピアノを弾いているのですが、これもポールのダメ出し攻撃にあってジョンがキレ気味にピアノを弾いたところ、勢いがあって良いということで採用されたと聞いています。また最近公開された映画「ゲット・バック」では、当時恋人だったオノヨーコさんをスタジオに招き入れてレコーディングに臨んでいるシーンがあります。例えて言えば、重要な会議に社長が愛人を連れて臨んでいるようなもので、他のメンバーにとっては仕事に集中できず困惑したのではないでしょうか。協調性がないと言わざるを得ません。こんな天才ミュージシャンに協調性を求めるか、というそもそもの問題がありますが。
ジョージはどうでしょう。若干ひねくれ気味の職人気質のミュージシャンなので、人の上に立つことは難しいと考えられます。例えるなら一人でコツコツとオーダーのスーツを仕立てている頑固な仕立て屋さん、という感じでしょうか。
ということで、私の見立てとしては、リンゴが社長として一番適切な気がします。人柄がよくて陽気、また鷹揚であまり自分のプレイに拘らず、いわゆる「神輿に乗る」ことができる人だと思います。ソロになってからも沢山のミュージシャンに支えられてアルバムをリリースし、また「リンゴ&オールスターズ」と題して他の有名ミュージシャンとツアーを回っています。最近も同世代のミュージシャンとセッションしている映像がYouTubeでアップされていましたが、みんな楽しそうにプレイしていました。
だから何、というお話しでしたが、一応、音楽好きの妄想としてご笑納ください。
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