コロナ禍で一旦収まっていた東京ないし首都圏への人口流入が再び始まったとのお話があります。弁護士業界はコロナに関係なく、もうずっと東京一極集中が続いています。ここ数年はその傾向が一層進んで、例えば現在新人弁護士である第76期司法修習生だった弁護士のうち、実に64パーセントが東京に就職しています。大阪は11パーセントとのことで、東京大阪で4分の3の新人弁護士を占めているということになります。一方で昨年12月中旬の時点で、新人弁護士が0の弁護士会が10会、1名の弁護士会が15会あったようです。
ヒト・モノ・カネがあつまる東京等の大都会に弁護士も集中するのは当然のことです。東京には数多くの企業が集まり、特に大企業は東京大阪に集中していますから、外国の著名企業との取引、合併等大企業の案件などは東京・大阪でないとできないかもしれません。
一方で人が住んでいるかぎり離婚、相続、交通事故等々、法的紛争は発生しますので、地方にも弁護士がいないと困ります。なぜこれほどまでに弁護士が都会に集中するのでしょうか。私が考えている原因は次のようなものです。
①そもそも東京(首都圏)出身の弁護士が多い。
首都圏で生まれ育った方は当然ながら馴染みのある地元に就職を希望します。なかなか、地縁血縁のない地方に行け、と言われてもそう簡単に行けるものではありません。
②地方出身者も進学等で上京した後、そのまま東京で就職する例が多い。
地方出身者も東京の大学や法科大学院に進学した後に司法試験に合格する方がたくさんいます。そうした方は就職もそのまま東京でする、ということになるパターンが多いようです。いつかは地元にUターン、と思っていたとしても結婚して家族もでき、マイホームも持つようになると移住もそう簡単ではありません。
③東京の大規模事務所の早期囲い込み(?)
私の頃は就職活動は修習生になった後が普通でしたが、現在は司法試験合格前にまで前倒しされているようです。東京の大手事務所がインターンという形で学生を受け入れ、優秀な学生には内々定のような形で囲い込んでおく、というような話を聞きます。そうなると、実務修習で地方の弁護士の仕事ぶりに触れて、そちらが合っているかも…と内心思っていても、好条件の大手事務所の内定を蹴ってまで地方に来るのは難しいように思います。
④給料
やはり都会の事務所の方が給与が高い、というような話を聞きます。
⑤都会への憧れ
この間、ファミレスで食事をしていたら、大学受験を控えた女子高生と思しき2人組が食事をしながらおしゃべりをしていました。「〇〇ちゃん、大学どうする?」「私は東京に行く。熊本、もう飽きた!」「よかねー。私も東京にいきたかばってん、親が許さんから、福岡かなー」。若いころは娯楽が多くてキラキラした大都会に憧れるのでしょう。地元の良さは一度外に出てみないと分からないものです。こうして大都会に出てそのままそこでで暮らす人と、大都会に疲れて地元に戻ってくる人がいますが、仕事や生活のこともあり、今のところ前者が大半のようです。こうして地方の過疎化が進むのですね。
なかなか、この傾向が変わることはないようですが、私も地方の弁護士の実情(暮らしやすさ等々)をアピールして、少しでも地方に向かう弁護士を増やしたいと思います。とはいえ、私の実情ではかえって逆効果かもしれず、もっと羽振りの良い先生にお願いしなければなりませんが(笑)
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